国王陛下の極上ティータイム
アルベルトは目を見開いてしばらくクラリスを見つめると、ふっとその表情を柔らかくして「貴女は、素晴らしい観察眼をお持ちなのだな」と言った。
その言葉は肯定の意味であるのだろうとクラリスは思った。
「ランティス様はずっと貴方を信じておられました。きっと何か理由があるのだと、思っていらっしゃったのです。そしてフォルストへの攻撃も避けることができないか模索されていました」
執務室に茶を届けたときに積み上げられた大量の資料は、フォルストに関することだったに違いない。何か策はないか、何か方法はないか、きっとずっと探していたのだ。
「ランティスらしいな。その甘さが弱点であり命取りになると昔から言われているのに、直っていないのか」
目を逸らすアルベルトにクラリスは「そうでしょうか」と反論した。
「それは甘さではなく優しさではないのでしょうか。そしてその優しさは決して弱点ではない。他では得難い長所です」
ランティスほど優しい人物はそうそういないとクラリスは思っていた。
権力を保持してなお、他人に寄り添うことができる。それが例え裏切られた同盟国の国王であろうと、親友であろうと。
それは決して排除すべき弱点などではないはずだ。
「ランティス様は今もきっと策はないか探しています。フォルストに攻撃せずに済む方法を。これからのこの国の行く末を。そして信じておられるはずです。親友である、アルベルト国王、貴方のことを」