国王陛下の極上ティータイム
「そういう経緯があって、陛下は昔から茶を嗜んでいらっしゃる。だからこそ中途半端なことでは陛下は納得されない」


クラリスはその言葉を聞いて身が引き締まる思いだった。

陛下を納得させるような茶を用意しなければ、オルレアンの旦那様にもご迷惑をおかけしてしまう。


「頑張ります」

「うむ、私も協力しよう」


ブランはクラリスにそう微笑みかけた。

ブランの申し出をクラリスは大変ありがたく思ったが、それも命令されていることだとブランは言った。


「衛兵達から厳しく言われていてな。王太后様を始め王族の方々が召し上がるものに毒が混入されていたのではとんでもないと」

「そんな、私がそのような愚かなことをするはずがありません!今回の王宮行きは突然決まったこと。それに万が一にも私がそのような真似をすれば、主人であるオルレアン伯爵にもご迷惑がかかるというのに」

クラリスは自分が毒殺を企てるような人物に思われているのかと心外だった。そして同時に腹が立つ。


「茶に毒を混入するなんて、そんなのお茶係の風上にも置けない」


自分の道を広げてくれた茶を穢すようなことをするわけがないのに。

怒りが収まらないクラリスに、ブランは「私もそう思う」と言った。


「クラリス殿とはまだ出会ったばかりだが、あなたの茶に対する愛情の深さは伝わった。それに何よりあなたが王太后を貶めようとしているなどと私は最初から思っていない」


「大きな声では言えないが」と声量を落としてクラリスの耳元で囁く。


「奴らは少々頭が固いのだ。致し方ないことかもしれないがな」

< 18 / 208 >

この作品をシェア

pagetop