国王陛下の極上ティータイム
今までランティスが寝ている姿など一度も見たことがない。

クラリスにとってランティスは神出鬼没の変人であると同時に、いつでも笑顔で仕事をこなす穏やかな人物という印象が強かった。

そんな人物が寝ているというのは不思議な感覚で手に変な汗をかいてしまう。

クラリスはベッドにそっと近づいて腰を落とす。

するとちょうど目の前にランティスの顔があって、クラリスは緊張して目を見開いた。

ただ寝ているランティスを起こさないように咄嗟に口元を押さえる。

緊張のあまり目を見開いているクラリスのことなど知る由もないランティスは目を閉じて夢の世界にいる。

しばらく見つめても目を覚ます様子のないランティスを見たクラリスはようやく平常心を取り戻して、改めてランティスの顔を覗き込んだ。

ランティスは国王陛下ではあるが、その容姿もクラリスが今まで出会った貴族や平民の中でもずば抜けて整っている。

これほどに美しい人はこの国にいないのではないかと思うほどに全てが美しい。

閉じられた瞳も、目にかかる黄金の髪も、カーテンの隙間からわずかにこぼれる光が照らす肌も、そのどれもが美しくて、まるで絵画のようだった。


こんな人がどうして自分なんかを好きになってくれたんだろう。そう思うのと同時に、今までと違う感情をランティスに向けている自分に気づいた。


眠っているランティスの頬をそっと撫でる。


__ああ、愛おしい。


そんな温かい気持ちで心が満たされていく。



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