国王陛下の極上ティータイム
絶叫するクラリスに、ランティスは「そうだね」と頷いて起き上がる。

「お、起き上がったりして、お体は大丈夫なんですか?」

「ん?うん、もう大丈夫」

へらりと笑う軽い笑顔はいつも通りで、いつもは腹が立って仕方のない笑顔なのに今はその笑顔が見れたことが嬉しかった。

「って、どうして寝たふりなんてしてたんですか!」

「クラリスがどんな反応するかなって思ってさ」

「いやあ、なかなかに想像以上だったけどね」とランティスは思い出し笑いをする。


「遊ばずにお体を治すことに専念してくださいよ」

「まあ、たまにはいいでしょ。たまの休みなんだからさ」


その言葉でクラリスは思い出す。

クラリスは王宮お茶係だ。仕事が終われば寮に戻り、寮にいる間は普通の平民となる。

けれどランティスはそうはいかない。いかなるときでも「国王陛下様」なのだ。

そして今までもずっと「国王陛下様」として仕事を続けて、体調を崩してからようやく仕事から解放された。

誰もが憧れる「国王陛下」という立場も、思うよりはずっと厳しい世界なのかもしれない。


「このところしっかり休んだおかげで、大分体調戻ったんだよね。仕事に戻るかどうかは明日判断するし、今日だけ一緒にいてよ」


「ね、お願い」なんて、我らが国王陛下はずるいことを言う。

この人にお願いされて動けない人なんて、この国にはただの一人だっていないのに。

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