国王陛下の極上ティータイム
きっとこの男性もクラリスが貴族の娘ではないことを知っているのだ。その上、王宮の使用人でないことも。

クラリスが何者なのか、それを確かめようとしている。


「いえ、違いますが」

「それは失敬。誰かに着いて来たのかな?」

「いえ」

そう答えると男性の目が怪しく光った。


「…へえ」


微笑みは変わらないのに気配だけが注意深くなるのをクラリスは感じた。

しかし自分は王太后様に正式にお招き頂いて、正式な手続きを経た上でここにいるのだと、自分は間違っていないと言い聞かせる。何も怪しいところはないのだ。


「お嬢さんは招かれでもしたのかな?」

「はい」

予想もしていなかったのだろう答えに、男性は少し驚きながらも「誰に?」と問う。


「王太后様に」


答えを聞いた男性は目を見開いて「王太后様に?」と答えを繰り返す。

無駄に話を引っ張る人だとクラリスはうんざりしていた。今は話している時間すら惜しいというのに。


「正式な手続きを経て王宮内立ち入りの許可証も頂いております。不届き者ではございません故、ご安心くださいませ。私はこれで失礼いたします」


自分の身の潔白は晴らした。きっとこの男性の知りたいことには全て答えられたと、クラリスは颯爽と男性のもとを去る。

去りながら頭の中で考えているのは、午後の茶のことだけ。

そのためクラリスは、その姿が見えなくなるまで男性が自分を見ていたことを全く気づかなかったのだ。

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