国王陛下の極上ティータイム
「料理長」

忙しく指示を出しながら動き回る料理長を呼ぶと、「よお、クラリスか」と料理長は顔を上げてクラリスを確認すると笑顔で近づいてきた。

「侍女長から聞いたぞ。クラリス、王太后様にお茶をお出しするんだって?」

「出世したなあ」と手を拭きながらも陽気な料理長にクラリスはどんな表情をしたらよいか分からず「はあ」としか答えることしかできなかった。

ほとんど表情を変えないクラリスに、料理長は「お前はいつも通り冷静だなあ」と軽く肩を叩いた。

「それで、何か用事か?」

「ええ。王太后様にお出しするお茶を決めるために、料理長がどんなお菓子をお出しするのかお聞きしようと思って」

「ああ、なるほど」

「ちょっと待ってな」と言い残して、料理長が調理場の奥から菓子を持ってくる。

「今日はこれをお出ししようと思っている」

真っ白な皿に乗せられていたのは、今日の朝届いたばかりであろう新鮮なカンコートと、卵色のプディング。

ふんわりとした甘い香りが漂ってクラリスの鼻をくすぐった。

「今日の朝突然聞いたもんで、立派なものは用意できなかったけどな。味にはもちろん自信があるぞ」

じっと皿の上の菓子を見入っているクラリスに気づいた料理長はその様子を見てほほえましく思いながら、「食べてみるか?」と問いかけた。

クラリスは「えっ?」と驚いて料理長の顔を見た。料理長はいつもと同じように目を細めて笑っている。


「なりません。これは王太后様にお出しするものでしょう?」

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