国王陛下の極上ティータイム
しかし思いつく紅茶の名前を挙げていてもすとんと腑に落ちる答えは見つからない。

クラリスの独り言を聞いていた料理長は腕組みをしながら考え、それから「グレーズは?」と思いついたように言った。

グレーズは注いだ紅茶の上に果物を浮かべた紅茶。柑橘系の果物が選ばれることが多く、爽やかな風味が特徴だ。


「今日の菓子の皿にはカンコートを添えた。カンコートはあっさりしているし、カンコートの爽やかさと酸味は甘いものにも合うんじゃないか?」


料理長の言葉にクラリスは「それだ」と思った。エメのストレートも、ジルダのミルクティーも、どれもおいしいしプディングには合うけれど、添えられたカンコートにも合うかと言われたら必ずしもそうとは言えない。

添えた果物のことも考えれば、答えは一つしかなかった。

どうして思いつかなかったのだろう、しかし料理長がいてくれて良かった。

「そうします。カンコートに合うのはカンコートのグレーズだけです」

クラリスは料理長の目をまっすぐに見て答えた。

「さすが料理長です」

その言葉に料理長は「俺が何年料理してると思ってる」と誇らしげに言った。

「この屋敷の中で食べる物についてはいちばん詳しいと思ってる」

だからいつでも聞けと胸をたたいた。

クラリスは嬉しくなって「そうします」と答えた。
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