国王陛下の極上ティータイム
「しかし、茶をカンコートのグレーズにするなら、いっそプディングもカンコートの風味にしようか。いや待てよ、ああ、そうだ、カンコートのソースをプディングにかけてみよう。プディングの甘さとカンコートの爽やかと酸味と甘み…合う、絶対合うぞ!」

料理長は何か思いついたようで、ぶつぶつ独り言を言っている。どうやら菓子に一工夫するらしい。

「ああ、クラリス、すまない。ちょっと考えごとを。そうだ、茶に使うカンコートはこちらで用意しておいてやる。カンコートは輪切りでいいか?厚みはどれくらいにする?」

「お気遣いありがとうございます。カンコートの酸化を抑えるためにも、できるだけお召し上がりになる直前に切りたいので私がします」

「それもそうか。そういうことなら包丁とまな板も仕えるように部下に指示しておく。必要なときに取りに来るといい」

「ありがとうございます、料理長」

頭を下げるクラリスと対照的に料理長は料理場の方に振り返って片手をあげる。

どうやら彼の頭の中では既にカンコートをプディングにどう使うのか考えを巡らせているらしかった。

クラリスはそっと料理場を離れて、王太后をお迎えする応接室に向かった。

お客様にお出しする食器類は全てここに収納されているのだ。

応接室に入ると、慌ただしく準備が進められていた。

塵一つ落ちていないピカピカの床、王太后様と旦那様、奥様が使われるであろう食器が机に並べられ、花瓶には朝露がついたままの花が飾られている。

クラリスは侍女達のそんな働きを邪魔しないようにとそっと部屋の中の侍女達を取り締まる侍女に声をかけて、食器棚から食器を取り出す。

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