国王陛下の極上ティータイム
側近のディオンが新たな資料を持ってやって来て「クラリス殿、お忙しいときにすみません」と謝られた。

「いえ、お忙しいのはディオン様でしょう」

こちらこそすみません、と謝ると「え、俺は?」とランティス様が尋ねる。

「ああ、すみません。忘れていました」

「俺国王なんだけど?」

「だったら陛下らしい振る舞いをなさったらいかがですか、ランティス国王陛下殿」

冷ややかなクラリスの言葉に、「はは、きみは本当に面白いね、クラリス」とランティスは笑った。

「そういうすばっと切るような言い方、いっそ清々しくていいよ」

ランティスは甘い。この上なく甘い。クラリスがどんなに失礼な言い方をしても怒るのではなく嬉しそうに笑って許してしまうのだ。

クラリスもランティスのその対応を不思議に思っているが、いつもそれ以上に苛立ってしまうのだった。

「あの、クラリス殿。ジュリエッタ様はどのようなご様子でしょうか?」

聞きにくいと言わんばかりにディオンが尋ねる。なにせランティスはジュリエッタ王女にセレスティーナ姫の接待を押し付けたのだ。ランティスの側近としては気になるところだろう。

「ええっと、大変疲れていらっしゃるご様子でした」

クラリスはそう答えると、じっとランティスを睨み付ける。

「ん、どうしたの、そんな怖い顔して」

女の子には似合わないよ、なんて言うから更に腹が立つ。
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