国王陛下の極上ティータイム
「セレスティーナ姫にお会いしたくないからといってジュリエッタ様に全て押し付けるのは、いかがなものかと思いますが」

ジュリエッタ王女は今もきっとセレスティーナ姫のお話をただ聞き続けているのだろう。その様子を想像して身震いし、同時に同情してしまう。ジュリエッタ王女に後で茶の差し入れでも持っていこうか。

「ふうん、クラリスは俺がセレスティーナ姫をジュリエッタに押し付けたから怒ってるわけか」

なるほどね、と何故か納得した様子でいつものように笑って否定をしないランティスに、クラリスは「お会いになったらいかがです」と言った。

「今のままではジュリエッタ様もセレスティーナ姫も、あまりに不憫です」

ランティスは「そうかもね」と言うのだけど、クラリスの言い分を少しも受け入れてはいなかった。

「確かにジュリエッタには申し訳なく思っているのだけど、俺だって暇じゃないんだよ。ほら、この山は今日中に目を通して必要なものはサインをしないといけない」

視線の先には机の上にどんと積み上げられた資料の山。確かにこの量を今日中に、というのは大変なことだ。

「だから自分が会いたいと思わないと会う時間なんてない。自分がやるべきことと会いたい人のために時間を使いたいから」

時間が惜しいと、ランティスは言う。確かにランティスの言うとおりかもしれないとクラリスは思った。

時間は有限だ。手のひらから溢れていく砂のように、止めどなく流れていくばかり。

だからこそ限られた時間をどう使うのか、きっとランティス様は他人より考えてこられたのだろう。


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