国王陛下の極上ティータイム
「ら…ランティス様?」
ランティスが息を切らして、そこに立っていた。
いつもの笑顔を貼り付けたような笑みではなく真剣な表情をして、肩を上下させながら息を整えている。
外はもう夜で、星が瞬いている。こんな夜更けにどうして陛下がこんなところにいるのか、クラリスにはさっぱり分からなかった。
「どうして、ランティス様が、このようなところに…?」
腕の力が抜け呆然と立ち尽くすクラリスに答えることなく、ランティスはクラリスが持っていた棒ごと抱きしめた。
「え、ら、ランティス様?」
しかしランティスは何も言わずにただ強く抱きしめる。
クラリスは混乱していた。なぜ、このようなことに。自分は夢でも見ているのだろうか。否、国王陛下が自分を抱きしめるなど、夢ですら無礼に当たるかもしれない。
「…すまない、クラリス」
ランティスはクラリスの耳元で掠れた声で小さく呟いた。
「見つけるのが、遅くなった」
まるで見つけられなかった自分を責めるようにランティスが言うので、クラリスは「そ、そんな、ランティス様が謝ることなど何一つありません」と慌てて答えた。
「私は大丈夫です。この通り、元気です」
それを聞いて少しだけ腕の力を緩めたランティスはクラリスを見つめた。
クラリスは息を飲んだ。エメラルド色の強いランティスの瞳に見つめられて、その瞳に吸い込まれるような感覚がした。
それからランティスはふっと眉を下げて「よかった」と安心したような声を漏らす。
いつもとは違うランティスに、クラリスの心臓はいつもより大きな音を立てて脈打った。