国王陛下の極上ティータイム
王太后様はティーカップを持つと鼻に近づけて匂いを嗅いだ。

「爽やかな香りですこと」

穏やかな表情をされる王太后様の様子にほっと少しだけ胸をおろしながらも、「採れたて新鮮なカンコートが届きましたので、菓子にも茶にも使用しました」と説明した。

「まあ、そうなの。私、果物はみな好きなのですけれど、その中でも特にカンコートは好物ですのよ」

それから一口茶をすすられて、目を見開かれた。

「これは…」

応接室内に緊張が走る。

王太后様はカップから口を離すと、ほう、と息を吐き出された。

クラリスは緊張のあまりエプロンの裾を握りしめる。


「なんて、なんておいしいグレーズでしょう。こんなにおいしいグレーズは初めてよ」


この上なく上品で穏やかな笑顔でそうおっしゃられて、クラリスはエプロンの裾から手を離すと深く頭を下げた。


「勿体ないお言葉です」


それから王太后は菓子を召し上がり「茶と菓子がよく合いますこと」とうっとりされていた。

「こんな素晴らしい使用人がいるなんて、オルレアンがうらやましゅうございますわ」などとも言われ、旦那様も奥様もたいそう嬉しそうなご様子だった。

それを見てクラリスは少しでも旦那様や奥様の役に立てたのだと思い、この上なく嬉しかった。

それから王太后様と旦那様、奥様は非常に穏やかで楽しそうにお話をされていた。

どんな話をされていたのかまでは、クラリスも働いていたために聞いてはいなかったため分からなかったのだが、とても和やかだったことだけは分かった。

そして王太后様が屋敷をお発ちになるとき、そのお見送りになぜだかクラリスも呼ばれていた。
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