国王陛下の極上ティータイム
「セレスティーナのことに付き合わせてしまって」

「い、いえ、大丈夫です」

うるさい心臓をなんとか落ち着かせながら、クラリスは茶を運ぶ。


「やはりクラリスが茶を淹れると違うな。香りが高い」


微笑まれてクラリスは何も言えず頭を下げる。

明らかに態度がいつもとは違うクラリスに気づいたランティスは「どうしたの?」と問いかける。


「いえ、何でもありません」

すみません、とクラリスは頭を下げる。

何でもないなんてことはなく、クラリスは戸惑っていたのだ。

クラリスの中でランティス国王陛下というのは国王としての威厳がなくいつもヘラヘラと笑っているという印象だった。国民や城で働く使用人達のことを立場や身分など関係なく大切に思う、優しくも暖かい人柄の少し変わった王だとも思っていた。

それなのに先ほど見たランティスはそれらとは違っていた。嘲笑うような笑みを浮かべて、淡々と事実を告げる冷酷非道な王でもあったのだ。聞いているだけでも身の毛のよだつような恐ろしい皮肉も簡単に言ってのけた。

それがクラリスのためであることもクラリスは分かっていたけれど、それでもその違いに理解が追い付かない。あたたかく優しい一面も、冷酷非道な一面も、どちらもランティスなのだと分かっているのに、感情と思考は別物だ。


「…驚いた?」

ランティスも理由に気づいたようで、遠慮がちに尋ねる。
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