国王陛下の極上ティータイム
クラリスはなんて答えればよいか少し考えて、それから「はい」と頷いた。


「いつも、ランティス様の国王らしくない態度ばかり見てきたものですから。こんなに裏表がある方だったとは思いもしませんでした」


思い切ってすべてを打ち明けると、ランティスは面食らったような顔をして、それからぷっと吹き出して笑った。


「はっきり言うね、きみは」


「それでこそクラリスだ」と笑うランティスに、クラリスは「どういう意味です」とむっとした顔を見せた。

しかしランティスからは「そのままの意味だよ」と微笑んだ。それから「今日はなんの茶?」と尋ねられて、クラリスはこれ以上問い詰めることはできなくなってしまった。


「…アーサのミルクティーでございます」


用意したのはミルクがたっぷり入ったアーサのミルクティー。いつもよりも多めのミルクでまろやかに仕上げた。

台車の上、ティーポットの横にちょこんとすまし顔で佇むそれを見つけて少し緊張が走る。それを顔に出さないように、何気なくそっとそれをソーサーの横に置いた。


「これは?」


これを置いたときから、できるだけ気づかないでほしいと思っていた。でもそれは無理なことで必ず気づかれるだろうなとも思っていた。けれど気づくのはもっと後だと思っていた。

想定より早いランティスの気づきにクラリスは驚きながらも冷静さを装いながら答えた。


「マロングラッセです」


本当は分かっていた。ランティスがお茶菓子には手をつけないことを。用意したところでランティスに食べてもらえる確率は低いことを。

分かっていたのに。
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