国王陛下の極上ティータイム
それでも用意したのは、どうしても食べてもらいたいと思ったからだった。

とても美味しい栗が採れたと、今朝ジェラルドがお裾分けしてくれた。確かに立派な栗で、お茶にしようかとも思ったが、真っ先に浮かんだのはランティスの顔。この栗を一番にランティスに食べてほしいと思った。


「へえ、栗か。そんな季節なんだね」


ランティスは感慨深いと言った様子を見せる。

「確かに、ランティス様は毎日のように資料に目を通したり会議に参加したりされる上、自分から季節の移り変わりに触れようとされることがないですからね」

「え、俺のせいなの?」

ディオンと楽し気にやり取りをしながらも、マロングラッセに目を落とす。

その視線がいたたまれなくて、クラリスは「あの、すみません」と断りをいれた。


「その、何と言うか、これ、見た目が美しくないですけど、気にはしないでもらえるとありがたいというか、その」


いつもとは違い、はっきりしない物言いのクラリスに不思議に思いながら「はっきり言っていいよ、クラリスらしくないね」とランティスは笑った。


「う…」


クラリスは言葉を詰まらせて、それから視線を逸らしながらこう言った。


「見た目のこと、気にしないでください」


ランティスとディオンは目を見合わせた。何を言っているのか理解できないという表情をしている。


「つまり、どういうこと?」


両の拳を固く握りしめて、クラリスはランティスを見つめた。


「これ、私が作ったんです」


心臓が飛び出すかと思うほどの緊張だった。
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