国王陛下の極上ティータイム
クラリスは緊張した面持ちのまま顔をあげた。恐る恐るランティスの顔を見ると、いつもと変わらない優しい表情をしている。


「手作りの菓子なんてもらったのは、小さい頃に母上に作ってもらって以来だな」


目を伏せて、本当に嬉しそうな顔をする。

こんな出来損ないのマロングラッセを、なんて優しい顔で見つめるのだろう。


「おいしいよ、ありがとう」


まるで蕾が花開くような笑顔だった。

ありがとうと伝えたかったのはクラリスの方だったのに、クラリスの方がありがとうと言われてしまった。


助けてくれた事実だけで嬉しかった。すごく、嬉しかったのに。

今こんなにも、こんなにも嬉しい。

あたたかい気持ちが胸にじんわり広がっていく。


クラリスは黙って頭を下げた。ただそれしかできないほど、嬉しい気持ちで胸が満たされていた。

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