あなたに追いつきたくて
待って…

私は後ろ姿に手を伸ばす。

顔は見えない。誰かもわからない。


でも、ここにいてほしくて必死に手を伸ばした。

振り向いた人の顔はほとんど見えない。

うっすらと見える口元は優しく微笑んでいて


口が動いた。なんていってるのかは分からない。


でも、私はなぜか安心した。

ガチャッ


ドアの開く音がして私は目が覚めた。

 
それと同時に今までのは夢だったことを悟る。

「ごめん、起こしちゃった?」


「いえ、大丈夫です」

私がそう答えると先生は不思議そうな顔をした。

「…怖い夢でも見た?」

「えっ?」

「涙でてる…」


先生は少しかがんでパーカーの袖で私の涙を拭いた。

その仕草にドキッとする。


「誰かが、どっかに行っちゃう夢、見たんです。」

「大丈夫?あ、そーいえばお昼買ってきたよ。寝てる間に行っちゃおうと思って…」

「ありがとうございます。」

「寝てたら寂しくないでしょ?」


あぁ、行かないでって言ったから、そこまで考えてくれたんだ…


「あ、あとこれ。」

そう言って渡されたのはマーガレットの花。

たった一輪だけど強く咲いてるようにみえる。

「わぁ、きれい~!」

「白岡さんぽいなとおもって選んだ…」


先生が花言葉なんて知らないことわかってるけど、それでも嬉しい。


マーガレットの花言葉は

「誠実」「心に秘めた恋」「真実の愛」


先生、私自惚れてもいいですか?
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