あなたに追いつきたくて
夏休みに入って1週間。

県大会まで残った私達は部活があった。

杉田先生は副顧問。


前日のスタートメンバー発表。

顧問の先生から告げられたのはキャプテン

新人戦から前回までもキャプテンをやってきたけど、今回のは責任の重みがちがう。


でも、県大会1回戦。


私達は負けた。自分の力を出し切れなかった。

緊張で足が動かなかった。みんなに全然声をかけることが出来なかった。

みんなは大泣きしていたけど、私は涙が出なかった。

ショックとキャプテンとしての自分の無力さに。


「綾花~杉田先生が呼んでるよ」

そう言ってきたのは部長の遥

「わかった、ちょっといってくるね」

遥も今日泣いていない。絶対悔しいのに。

きっと1人で責任感じているのは私と一緒なんだろう。


「先生、なんですか?」

「あぁ、白岡さんちょっとついてきて」

そこは殆ど人がいない静かで夏には似合わないような涼しさの落ち着けるような、そんな場所。

そこについてからもお互い一言も言葉を発さない。

先に沈黙を破ったのは、先生だった。

「白岡さん、自分のせいだとおもってるの?」

「えっ?」

まさか、先生にそんなことをいわれると思っていなかった私は正直驚いた。

「思い詰めた顔してる。泣いてないのは悔しくないんじゃなくて、涙もでないくらいショックなんじゃないの?」

「なんで‥」

「わかるよ、毎日見てるもん。誰もいない所なら泣いていいんじゃない?弱いとこ見せたくなかったんでしょ?全部吐き出してみなよ。」

「先生、私ね、中学入ってからずっと部活しかしてきてないの。最後の大会には掛けてたの。前回の大会はベスト16目前に負けたから…」

私が話し始めると先生は、ただ黙って頷く。


「1回戦も勝ちあがれなくて、、私、チームのためになにもできなかった。チーム任せてもらったのに…。私のせいなのに、遥は1番責任感じてるの。」

段々溢れ出してきた涙は止まることなく流れる

「誰のせいでもないよ。良い試合だったんじゃないの?白岡ちゃんとキャプテンだったよ。少なくとも、俺にはそう見えたし…」

泣きやまない私をベンチに座らせた先生は

「よく頑張ってたよ」

そう言って頭をくしゃっと撫でた


不覚にもドキッとしたのはきっと気のせい


「そろそろ、もどろうか…」


戻るとみんながよってきてくれた

帰りの準備をして数時間前まで戦っていたコートをながめ、会場を後にした。

2年間半続けてきた部活がおわった。

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