あなたに追いつきたくて
「白岡さん、ちょっといい?」

私は担任の先生に呼び出された。


理由は何となく分かってる。

夏休みの三者面談のときに志望校を聞かれて、私はありません。と答えたからだ。


この時期で志望校が決まっていない人はたくさんいる。

でも、1つに絞り切れていないだけで、その人たちはいくつかの候補がある。

私には候補そのものがない。


とくにやりたいこともなければ、夢もない。

だから、この学校に行ってこういうことがしたい。という希望もない。

「この間の三者面談のことなんだけど、」

やっぱり。

「はい。」

「まだ、いきたい高校1つも見つからないかな?」

「あー、すみません。まだ…。文化祭とか説明会とか行ってみます」


「わかった。自分の行きたい高校が見つかるといいね。一応学力的にいけそうなところ出しといたから参考にしてみて?」

「わざわざありがとうございました。失礼します。」

…高校か。どーしよう。

担任にもらった資料をもって廊下を歩いていると前から歩いてくる杉田先生。

「あれ、白岡さんどうしたの?」

「あぁ、志望校のことでちょっと。」


「あー、そっか。決まってないんだっけ?担任の先生が心配してた。」

「そうなんです。行きたいところもないし、やりたいこともないので。」

「夢とかないの?」

「とくにないです。」


「そっか~。教員は?社会得意じゃん笑」

「教員、かぁ。考えたことなかったけど、いいですね。」


「ちょっと考えてみてよ」

「はい、参考にしてみます、ありがとうございます!」


教員いいかも。好きな社会やってられるし!!
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