Real Heart
矢野優姫、22歳。

半年前に愛する人を交通事故で亡くした。

結婚一年目だった。



「ゆうきおねぇーちゃん!」


自分の世界にいたのを聞き慣れた声が引っ張り戻した。

声がした方を振り仰ぐと、こちらへ向かって走りながら大きく手をふる少女の姿があった。

「明菜ちゃん」

自然と笑みが溢れて、少女……
明菜に向かって手をふり返した。

小高い丘の上。目の前には青い海が波打つ様子が見えている。

丘と言えば所どころたんぽぽが咲いているけれど、

後は緑の草原が広がっているだけだった。

そんなちょっと殺風景な景色の中に、

何故かぽつんとベンチが置いてある。

海に向かって、誰が一体何の為
にいつ置いたのか分からない。

けれど、優姫にとってはとても大切な場所の一つだった。

あの人との思い出がたくさん詰まった大切な場所。


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