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epilogue
タクミは生きてく希望を無くして彷徨い続けた。

何をしててもキョウを近くに感じるようだと言った。

「キョウはきっとオレのそばにいる。」

タクミはオレにそう言ってた。

キョウはもうとっくにオレもタクミも解放したのに
タクミはキョウの亡霊にずっと縛られ続けた。

仕事も断ることが多くなった。

タクミはキョウと似てる女と付き合っていた。

「タクミ…あの子の事キョウだと思ってるだろ?」

「いや、キョウとは全然違う。

似てるのは外見だけだ。

キョウの代わりなんてどこにもいやしないのに…

バカだろ?」

そんなタクミが気の毒に思えた。

キョウが去った後のタクミはまるで抜け殻だった。

タクミは眠れずに薬を飲むこともあった。

オレは過剰に飲まないように頻繁に会って必要な数だけ渡した。

心療内科に通う事も進めた。

タクミにとってキョウがただの執着ではなかったと知った。

タクミはキョウ無しでどうやって生きて行くのか。

タクミを置いていったキョウを残酷だとさえ思えるほどタクミは疲弊していった。

タクミはオレにしょっちゅう逢いに来た。

キョウとの思い出を話せるのはオレしかいないからだ。

「もうキョウのことは忘れろよ。」

オレがそう言ったらタクミはオレを殴って泣いた。

「オレがキョウを忘れたら…
キョウが悲しむだろ?」

「そんな今のお前をキョウが見たら
それこそキョウが悲しむ。

キョウの為にも前を向いて生きるべきだ。」

だけどタクミの時間は止まったままだった。


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