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心療内科にキチンと通うようになって、
タクミは日常を取り戻していた。

例の薬の過剰摂取で病院に運ばれた自分を
タクミは反省したようだった。

あれからタクミはキョウと似た彼女とは別れた。

彼女を見るとキョウを忘れられなくなるからだ。

オレはそれを聞いてホッとした。

タクミは仕事の量も増やし、
オレはタクミと会う回数が減った。

それでもたまに酒を交わし
キョウの思い出を語ることもあった。

タクミは何もかもが順調というわけではなかったが
少なくとも仕事の面では上手くいっていた。

オレはキョウにやっとタクミのことを報告出来るようになった。

タクミもキョウのお墓に良く来ているようで
キョウの好きだったカスミソウの花束をいつも置いて行く。

タクミはキョウのお墓に何を報告しているんだろう?

まだ愛の告白とかしてるんだろうか?

さすがに亡くなったキョウにまで嫉妬する気持ちはなかったが
タクミの愛は本物だったと思えた。

多分オレよりもずっと深くキョウを愛してたんだろう。

キョウの三回忌にはタクミもハナエも集まった。

「ハナエ、元気だったか?」

ハナエは一歳になる女の子を連れていた。

「可愛いなぁ。ハナエに似て美人だ。」

「2人は?恋人とか出来た?」

「いや、オレはまだ。」

「タクミは?」

「うん。まぁ…付き合ってる人はいる。」

オレたちの時間は動いてる。

オレたちはどんなに悲しくても辛くても
キョウを忘れて今を生きなければならなかった。
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