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それからしばらくしての事だった。

思いもよらない事が起こった。

「38歳の男性です。ビルから落ちたそうです。

頭を強く打って意識はありません。」

顔を見て驚いた。

思わず倒れそうになって看護師に支えられた。

「先生?大丈夫ですか?」

「あ、あぁ。」

男はあの藤堂拓海だった。

酔ってビルの屋上の塀を越え、
歩いていて足を滑らせたのではないかという話だった。

結局タクミはキョウに逢いに行こうと思ったのだ。

キョウに逢いたくて酒を飲み、
酔った勢いで逢いに行こうと軽い気持ちで飛び降りたんだと思った。

幸い近くにあった木に引っかかって即死は免れたが
極めて厳しい状態だった。

目が覚めたら自分のした事をきっと後悔するだろう。

オレは何としてもタクミを助けたかった。

しかしもともと生きる気力のないタクミは途中で息絶えた。

心肺蘇生を行ったが
帰って来ることはなかった。

もしかしたらオレ自身がこのまま逝かせてやりたいとどこかで思っていたかもしれない。

タクミはこれ以上生きることを望んでない気がして…

結局、タクミは最後までキョウを思い続けて死んだ。

部屋に戻ると携帯にタクミからメッセージが残っていた。

〔レオ、悪い。キョウのところへ先に逝く。〕

オレはその場で泣き崩れた。

タクミはその生涯を自殺という形で呆気なく閉じてしまった。
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