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レオは相変わらず帰らない日が続いた。

成人式の後、タクミからなかなか連絡は来なかった。

やっぱり酔いが覚めると同時に気持ちも冷めてしまったんだと思った。

レオと会えない日が続くと
アタシはタクミのことを考える時間が多くなる。

こんなんじゃダメだとレオに電話してみると
レオは電話にも出なかった。

麻雀に夢中でアタシの事なんか思い出したりもしないんだろう。

それでもその方が気が楽だった。

次の日、大学の友達にクラブに誘われて行く事にした。

「キョウがクラブに来るなんて珍しいね。
もしかして彼氏と別れた?」

「そういうワケじゃないけど…
忙しいらしくてぜんぜん逢えないんだ。」

アタシは飲んで踊って騒いで
その時は楽しかったけど
クラブから帰ると静かすぎる部屋はアタシを余計に寂しくさせた。

アルコールで理性が壊れてたアタシは寂しさのあまり無意識にタクミに電話をかけてしまった。

「キョウ?どうした?」

受話器からタクミの愛しい声がした。

「…タクミは元気にしてるかなって思って…。」

「逢いたいのか?」

「別にそういうワケじゃないよ。」

「逢いたいって言えよ。
そしたら逢いに行ってやる。」

「もう眠くなった。
じゃあね。」

「可愛くねーな。」

逢いたいなんて言ったらレオとハナエを裏切る事になる。

アタシはタクミの声を聞けただけで…
それだけで良かった。





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