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アタシはその日、全く講義が頭に入って来なかった。

考えるのはタクミの事ばかりで
レオと別れる覚悟も無いのに
タクミに言われて気持ちは大きく揺らいだ。

麻雀にハマってほとんど連絡も取れないレオと別れるのは今のアタシにとって容易い事かもしれない。

ただレオと別れてタクミに執着する自分が怖かった。

その日の深夜、
突然タクミがまた酔っ払ってやって来た。

「キョ〜〜ウ!開けろよ!」

時計を見ると12時近かった。

近所から苦情を言われても困るので
アタシは急いで扉を開けた。

「お酒飲んでる?」

タクミはアタシを壁に押しつけて
両手で逃げ場を塞いだ。

「お前、何ともねぇのかよ?」

「タクミ…飲み過ぎだよ。」

タクミはアタシの目をジッと見つめて言った。

「何でそんなに平気なんだよ。」

「平気なんかじゃ無いよ。
タクミのせいで頭おかしくなりそう。」

「レオと別れろ。
お前は俺のモンだ。
昔からずっと俺の事が好きだったろ?」

タクミはまたキスをする。

アタシはタクミの頬を叩いた。

「タクミ、どうかしてるよ。

ハナエはどうなるの?」

「お前が別れろって言うなら別れる。」

アタシにはそんな事絶対に言えない。

「キョウ…別れてくれって言ってみろ。」

「どうしてそんな残酷な事言わせようとするの?

ハナエの事好きじゃないの?」

「好きだよ。

でもお前が別れろって言えば別れてやる。」

「ヒドイよ。

そんな事言えるワケないじゃん。」

「大事なもの捨てるくらい好きになってくれたら
オレはお前の言う通りにする。」

タクミは何を望んでるかわからない。

アタシも自分が何を望んでるのかわからなかった。


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