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その夜、ハナエは帰ってこなかった。

帰って来たのは早朝で
かなり酔っ払っていた。

「ハナエ…あの人達大丈夫だった?」

「何が?」

「何かされなかった?」

「何かって?

あ、やっちゃったとか思った?

まさか!私、そんなに軽くないよ。

何?もしかしてキョウちゃん、あの人としちゃったの?」

「してないよ!でも…かなりヤバくて逃げて来たの。」

ハナエは少しはビックリするかと思ったけど
全然平気そうだった。

「ヤバいって?薬でも盛られた?」

「まさか、ハナエも?」

「あの人達、結構紳士だったよ。

田澤さんは結構ヤバいみたいだけど…
よく逃げて来られたね。」

ハナエはそんな男とアタシを2人っきりにして平気だったのかと思うと腹が立つ。

「酷くない?」

「ゴメン、キョウちゃんはしっかりしてるから大丈夫だと思ってた。

何もなかったんでしょ?

それなら怒らないでよ。」

「ハナエはホントに大丈夫だった?」

「アタシは全然大丈夫。

あの人達と一緒にクラブには行ったけど…他にカッコいい子にナンパされちゃって…
抜け出してその子とちょっとだけ遊んで来ちゃった。」

タクミのことを考えると信じられなくてカッとなった。

「ハナエにはタクミが居るのにそんなこと…」

ハナエは水を飲み、アタシの目の前で服を脱いだ。

タクミに愛されてる身体だと思うと胸が苦しくなった。

「何怒ってんの?

踊って飲んだだけで何にもしてないよ。」

私には怒る資格なんて無いけど…
ハナエがタクミを大事にしないのは頭にくる。

「でもね、キョウちゃん…

タクミは私の事なんかホントは好きじゃない気がする。

キョウちゃん、私は淋しいの。

タクミとは付き合ってるけど…
愛されてるって思った事は一度もない。

告白したのも私からだし…

電話やデートに誘うのも全部私からなの。

いつも忙しいし…私だって寂しくなるよ。

たまに他の男の子と遊ぶくらいいいじゃない?」

それでもタクミはハナエと別れたりしない。

高校からずっとハナエはタクミを独り占めして来た。

「だけど…タクミは別れようって言わないじゃない?
ハナエのこと好きな証拠だと思わないの?」

「こんなに思いさせるならいっそ別れて欲しいくらい。」

「じゃあそう言えば?」

アタシは頭に来て思わずそう言ってしまった。

ハナエは何も言わずにバスルームのドアを思い切り閉めた。



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