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タクミはアタシをジッと見て

「レオは元気？」

と聞いた。

タクミとレオの話題はしたくなくて

「うん。」

とだけ答えた。

「子供は？」

「え？居ないよ。」

「そっか。」

自分のことを聞かれたくなくて
アタシからタクミに質問を返して話題を外らせた。

「タクミはどう？

仕事楽しい？

スポーツニュース毎週観てるよ。」

「そう？サンキュー。

まだ慣れなくて…色々大変だけど楽しくやってる。」

タクミは俳優よりスポーツキャスターの方が楽しそうだった。

以前よりまた少し細くなって
アスリートのタクミの面影がどんどん失われていく事が少し寂しかった。

「お前も少し痩せたな。

仕事大変なの？」

「うん、まぁ忙しいかな。」

本当は仕事より私生活のが精神的に大変だったが、
最近はレオとも上手くやってる。

それでもタクミの前でレオの話はしたくなくて
アタシは何事も無かったように幸せな主婦を装った。

「ハナエ…結婚したな。」

「うん。
タクミは…それで良かったの？」

「うん、ハナエにはずっと悪いと思ってたから…」

タクミはハナエの話をする時、
アタシから視線を外した。

何となくその気持ちがわかって
アタシも窓の外を見た。

「何かさ、こうやって話すの照れ臭いな？」

「うん。…そうだね。」

アタシたちは結局、深い話をあまり話さなかった。

タクミはすぐ次の仕事が入っていたらしく
30分位しか時間がなかった。

「じゃあ、またな。

逢えてよかった。

キョウ、また連絡してもいいか？」

アタシは少し考えてしまった。

レオの事があったからだ。

それでもタクミの顔を見るとまた逢いたいと思ってしまう。

「うん、またね。」

アタシはそう言ってタクミに手を振った。

アタシたちはいつの間にか本音を話せなくなっていた。