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タクミはアタシの前で泣いた。

似合わない靴を履いて
心を許せる人が周りに居なくて
タクミはこの世界に入ってから多分ずっと孤独だったんだと思った。

もともと軽い気持ちで始めて
あっという間に人気が出て辞めるに辞められなかっただけだ。

こういう仕事が向いてると思ったことは一度もなかった。

アタシは泣いてるタクミを抱きしめて
キスを受け入れた。

あとはもう止められなくて
お互い1つになりたくて夢中で抱き合った。

「キョウ…やっぱお前がいないとオレ…」

アタシはタクミのその言葉の続きを聞いてはいけない気がして
その口をキスで塞いだ。

「それ以上言わないで…

そんなこと言われたらアタシ…」

きっと何もかも捨ててしまうと思った。

アタシたちはその先を言葉にしないまま
ただ抱き合ってお互いの体温を感じた。

アタシはその事を後悔したけど…
もう戻れなかった。

タクミは芸能界を引退すると言って
アタシはレオと離婚する覚悟を決めた。

2人で田舎に帰ってやり直そうと誓った。

そんなに簡単な事ではない事は最初からわかっていたけど…
そんな時、思っても見ない事がアタシの身に起きてしまった。






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