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アタシはしばらくして骨髄移植を受けた。

そして経過を見て退院することになった。

体力は回復して、
前のように仕事も出来るようになったが
なかなか前のポジションには戻らせてもらえなかった。

アタシは33になっていた。

3年もの闘病の間、色んな事を考えた。

レオとの子供は作らなかった。

いつ再発するかも分からなくて
検査の度にきっと怖い思いをするだろう。

もうあんな病気に戻りたくない。

タクミとは病院で会ってからずっと連絡を断ってる。

今更、恋愛をする気にもなれなかった。

もう10代の頃のようなあんな気持ちには戻れない。

あんな風に恋愛だけで頭の中も心の中も支配されるような
そんな情熱に身を焦がすほど若くはない。

アタシは他に考える事が出来た。

これから自分がどう生きるべきか考えてる。

レオとは相変わらず仲良くやってるし、
穏やかでそれなりに幸せだった。

人には縁というものがある。

レオとは一緒になる縁で結ばれてて
タクミとはいくら愛し合っていても一緒になれない気がした。

「タイミングじゃない?」

ハナエにそう言われた。

「アタシもタクミと縁がなかった一人だけど…
キョウちゃんとは何て言うのかな?

隣の家にタクミが居て…それだけでもすごい縁だと思う。

お互い惹かれ合ってたし…

でも…いつも好きになるタイミングが悪いんだよ。

それはやっぱり縁が無いって事かな?」

「うん…きっとそう。」

アタシはタクミの全てを忘れる事にした。

だけどそれは多分アタシの本心じゃなかった。

後から考えたらその時のアタシは
無理にタクミへの想いを封印しただけだった。
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