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しばらくするとタクミをテレビで時々見かけるようになった。

「タクミまた人気出て来たな。」

レオがタクミの出てるテレビを観ていた。

「うん。

前とはやる気が違うみたい。

コメントも面白いよね。」

急に売れてしまったタクミはまた遠い人になった。

でもアタシはその方がずっと楽だった。

タクミにはテレビでいつでも会えるし
安否を気にすることもなくなった。

だけどタクミはアタシの知らないところで
とても苦労していたようだ。

芸能界に望んで入ったワケじゃないタクミにとって
その選択はとても辛かった筈だ。

それでもタクミは一家を支えるためにその場所に立ち続けた。

事件を起こしたら一発でこの地位を失くすと分かっていたから付き合いを慎重に選んで
タクミは誰も信じなかった。

タクミはとても孤独だったと思う。

だからある日突然、レオに逢いに来たのだ。

激変した世界でタクミは一人その場所から動けずにいるみたいでとても気の毒に見えた。

「お前らと会うと癒される。」

タクミはそう言ってレオと飲んだ。

アタシ一人の時は絶対に来なかった。

不倫スキャンダルなんて書かれたら
アタシにもレオにも迷惑をかけると思ったからだ。

そしてそんなスキャンダルは今のタクミ自身の命取りにもなる。

そんな張り詰めた生活の中でタクミはレオとアタシに助けを求めるみたいに時々やってきた。








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