次期王の花嫁 ~真面目次期王は蒼眼王女に落とされたい?~(次期王の行方2) 
 マキセもはじめは周囲の者と同じ反応だったのだが、クーデノムに対する好奇心の方が強かった。話しかけると意外と気さくな性格で、すぐうちとけて仲良くなった。
「なかなか、いい青年だ。うちに欲しいくらいだなぁ」
 サラリと口にする言葉にマキセも軽く対応する。
「あげられませんよ」
「うちにくればリサニル産の酒も呑み放題だぞ」
「うわぁ…本人が聞いたら揺れることを」
「……やめとこう。酒蔵がいくつあっても足りなさそうだ」
「確かにね」
 クスクス冗談っぽく言うコセラーナにマキセも返しながら内心はちょっとドキドキだった。
 クーデノムが酒好きという情報は語っていない。
 彼がどこから情報を入手したのか…クーデノムがコセラーナの名前からテニトラニスの王だと判断したように、彼も覚えていたのかもしれない。文官として書類などに書かれたクーデノムのサインを。
「うちの姫もどうやら彼を気に入った様子なのだが…範囲内だろうか?」
 楽しそうに告げる言葉。しかしそれは別の重みも担っている。
 クーデノムを見て気に入ったのか、それとも今の彼の立場を知ってのことなのか、コセラーナの表情からはどこまで情報を握っているのか全く判断できない。
 敵に回せば怖いタイプだ。
 でもマキセにしてみれば、彼を敵に回す必要などないのだ。
 むしろ味方に……。
 壁際に居たクーデノムが何かを見つけたらしく、動くのを視界に捕らえた。
 その先にいる彼女の姿を見て、マキセはコセラーナに笑顔を返す。
「それは…姫の押し次第だなぁ」
< 12 / 33 >

この作品をシェア

pagetop