次期王の花嫁 ~真面目次期王は蒼眼王女に落とされたい?~(次期王の行方2) 
 夜風が少し酒でほてった身体には気持ちいい。
 夜中になろうとも街の灯りは消えず、時折大きな歓声などが遠くから聞こえてくる。
 ルクウートの祭典は国民にとっては催し物がなくても盛り上がっているようだ。
 さすが一国の貴賓が宿泊する屋敷。中庭を一望できるテラスは野外パーティも出来る造りになっていて結構広い。
 クーデノムは手すりにもたれてなんとなく空を見上げて溜息をついた。欠けた月と共にクスイとさほど変わらぬ星空が見える。
 気にしないようにしていても、ふと思い出したように感じる今の自分の立場。
 クスイ国の中枢で王に仕える文官。
 世界を知る勉強として無理矢理に行かされた遊学だが、こうして外交に役に立っていると共に、国王の企んでいる表情を思いだし何だか腹立たしい。
 しかしそれ以上にに国外秘とされている別の立場――『次期王位継承者』。
 マキセと共にふざけ合ってる時は以前と変わらない…変わらなくてもいいのだと思えるのに。
「あ」
 上から小さな声が降ってきて、人影が上の階から顔を覗かせた。
 月明かりに照らされるのは金糸の長髪。
 パタパタと人影が動き、建物の端の方にあった階段を降りてくる。
「クーデノム様」
 元気いっぱいの笑顔を向けて駆け寄ってくる。
「セーラ姫。そんなに走って大丈夫ですか?」
「あ…忘れてた。もうそんなに痛くないから……」
 見上げてくる真っ直ぐな瞳。
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