次期王の花嫁 ~真面目次期王は蒼眼王女に落とされたい?~(次期王の行方2) 
 その様子を上から見下ろしてマキセは微笑を浮かべる。
 仕事上、人の意見を見聞きし、何らかの結論を出した後、それを実行すべく王宮の各部署に難題をふっかけることは少なくなかった。
 しかしそれは自分のためではない。
「選ぶものすら何もない、真っ白な自由は…寂しいだけだよ」
 改まったマキセの呟きに、クーデノムは視線を上げた。背を向けているためマキセの表情は見えなかった。
 感情のこもらない淡々とした口調は、逆に想いの強さを示していた。
『一度、総てを無くした事がある』
 詳しくは知らないマキセの過去。
 家も家族も一気に失い、身ひとつでクスイの王都に来たと、お酒の席で耳にしていた。
「まだ時間はある。急いで答えを出さなくてもいいなら、じっくり悩め」
「明日、ルクウートを発つらしい」
「それでもいきなり婚約者じゃなく、友達や恋人から始めても良いんじゃないか?」
 相手はまだ若いんだし、と軽く言うマキセにクーデノムは笑みを浮かべた。
「そうですね」
 今すぐ決めろとは誰も言っていないのだから。
 ようやく笑みを見せた親友にマキセは満足顔で立ち上がり、自分のベッドへ入り込む。
「今日は本当、疲れた。さっさと寝ましょう」
 しかし、
「ここに…こんなのがあったりするのですが……」
 クーデノムの言葉に振り向くと、いつの間にか一本の瓶を手にして微笑む彼の姿。
 リサニル産の幻の果酒。送ってもらった別れ際にコセラーナから差し入れされた一品。
 一瞬、動きを止めたマキセは仕方なさそうなフリをして再び起き上がった。
「こうなりゃ、とことん付き合いましょう」
 注がれた淡い水色の液体。グラスを受け取ると、二人は景気よく飲み干した。
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