次期王の花嫁 ~真面目次期王は蒼眼王女に落とされたい?~(次期王の行方2) 
「さっきの人だー」
と無邪気な声をあげる金髪の男の子は、先程の試合で勝利したマキセを覚えていたらしい。
「格好よかったです」
「おぅ、ありがとう!」
 はしゃぐ10歳にも満たない男の子の後から、
「ちょっとー、待ちなさいよ、エイーナ!」
 足音と声に振り向いたクーデノム。
 同じような金色の長い髪のまだ幼さの残る顔立ちの女の子が、男の子を追いかけてやって来た。
 年は十代半ばといったところだろうか。動きやすい服装をしていても、立ち振る舞いは町娘という感じではなく、どこかいいとこ育ちのお嬢様。
 彼女は駆け降りようとしたのだが…座席のために造られた幅の広い階段に勢いづいた歩幅が合わず、足を踏み外した。
「きゃあ」
 驚きで声を上げ階段から落ちそうだった彼女をクーデノムは頭で判断するよりも素早く抱き止めていた。
「…大丈夫?」
 しっかりと胸にしがみついたままの彼女に声をかける。
 その声に我に返ったらしい彼女は思わず閉じていた瞳を開けてクーデノムを不思議そうに見上げた。
 大きな蒼い瞳。
「姉上!?」
 男の子が驚いて声を上げる。
「あ、はい。大丈夫です、すみません…っ」
 慌てて離れようとした彼女は表情を歪めた。
 少し足を引きづる仕草に傷めたのだとクーデノムは気付き、再び腕で彼女を支える。
「足を傷めたみたいだね」
「す…すみません……」
 恥ずかしそうに慌てる彼女に微笑して、椅子に座るように促そうとした所に、バタバタと乱雑な足音を立てて数人の男達が現れた。
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