次期王の花嫁 ~真面目次期王は蒼眼王女に落とされたい?~(次期王の行方2) 
 それでもクーデノムは平然と言う。
「悪質な賭博は投獄ですよね。あぁ、ここはクスイじゃないから違うのか」
 強気の視線を男達に向けて言い放つ。
「それとも、ここはルクウートだから、どんな問題も剣でカタを付けるんですか?」
 完璧に挑発する言葉にもう一人が剣を抜き、先の一人は振り降ろしながら突っ込んできた。
「きゃっ」
 小さく悲鳴をあげたのは彼女。目をつぶってクーデノムの背中にしがみつくが、彼は全く避けようとせずに突っ立ったまま。
 しかし、男の剣が彼に届くよりも先に、間に入りこんだ剣にはじき返されていた。
 剣の持ち主は肩で息をしながらクーデノムの前に出た。
「回避できるケンカは買うなよなぁ」
「時間稼ぎはしたでしょ」
 現れたのはマキセだ。
 闘技場からクーデノムのいる観客席まで全力疾走してきたらしい。
「こいつら、仲間だ。八百長で賭けは不成立だ」
 男が二人の姿を見て言う。
「何言ってんですか。負けてこそヤラせでしょ。勝てる試合に勝ってどこが八百長なんですか」
 呆れた声で淡々と言い放つクーデノムの言葉にマキセもうんうんと肯く。
 逆に大男こそが彼らの仲間で体格だけで八百長で出場した感じであるのに。
 しかし彼らの理路整然とした言葉は男達には火に油を注ぐがごとし。残りの二人が剣を抜くと有無を言わさず襲ってきた。
 マキセは一人の剣を受けとめ、すぐさまクーデノムに向かおうとした男に蹴りを食らわし転倒させる。
 その隙に別の男はクーデノムに向けて剣を振りおろす。
 彼女を守りながら一振り目を素早く避けたクーデノムに、男は素早い動きで剣を切り返す。
 キンッ
 小さな金属音が男の剣を止めていた。
 クーデノムが護身用に持っていた懐剣で受けとめたのだ。その背後からマキセが剣の柄で男を殴り気絶させる。
 そして、マキセが先に転倒さした男が再び起きあがろうとした所に、足の太股をかすり衣服を地に杭止めた、懐剣。
「そこで何をしている!」
と突然声を出しながら現れた数人の男は同じ衣服に身を包んだルクウートの警備士達だった。
< 7 / 33 >

この作品をシェア

pagetop