あなたに飼われたい

思い出せない

体が燃えているように熱く、呼吸が苦しい。

首すじに何かふわっとしたものが触れた。猫だった。真夜に頬をすりつけてくる。

「心配してくれてるの……優しいんだね、ありがとう……」

撫でようとするが、体に力が入らず腕が動かせない。

玄関のドアが開いて一樹が帰ってきた。荒い呼吸。急いでいるのがわかる。

スポーツドリンク、冷えピタなどが入った袋をサイドテーブルに置き、真夜の様子を観察する。

「どこか痛いところとか変なところはないか?熱以外には?」

「いえ、熱があるだけ、だと思います」

「……多少医学の知識はある。薬も一通り揃えてあるから大丈夫だとは思うが、病院へ行こう。少し遠いところに行かなければならないが、車には乗れそうか?」

「……ちょっとしんどいかもしれないです。大丈夫です、寝たら治るような気がするから……」

「とりあえず、水分補給はしっかりしてくれ」

そう言って、男はコップにスポーツドリンクを注ぎ、ストローを刺して真夜に差し出した。

……懐かしい、ような気がするな。小さい頃、熱を出した時はお母さんにこうしてもらったっけ……でも、知らない男の人にこんなことしてもらってるの、変な感じ……

真夜はそのまま眠りについた。
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