あなたに飼われたい
りんごジュースを飲んで、真夜は再び目を閉じる。

布団をかぶり、しばらくさっきまでの一樹とのやりとりについて思い出していた。

自分はかなり馴れ馴れしい人間だったらしい。

自分と一樹は「仕事上の知り合い」だったそうだが、下の名前で呼び合っていた。

しかし今は記憶がなく、彼のことを一樹くんと呼んだり、タメ口で話しかけたりするのは難しい。今の自分は少し内気だし、ほぼ初対面のようなものなのだから。

「あの……一樹さん。一樹さんはなんのお仕事をしてらっしゃるんですか?」

少しの間を置いて、一樹は答えた。

「すまない。あまり多くのことを君に知らせてはいけない決まりになっている。……俺が色々と言うことだってできるが、今の君は不安定だ。あまり色々と情報を与えると、記憶が混濁してうまく思い出すことが困難になるかもしれない。俺が教えてやれるのは、今までに言ったことだけだ」

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