あなたに飼われたい
ノックから数秒置いて、ドアノブが回った。

「あの、随分長いこと部屋にこもってるから、ちょっと心配になって。コーヒー持ってきました。良かったらどうぞ」

一樹は一瞬面食らったような顔をして、それから笑顔を見せた。

「君がこれを。ありがとう」

真夜はそれを見て顔をぱあっと輝かせた。

一樹さんが喜んでくれて嬉しい。

「ちょうど夕飯にしようと思っていたところだった。向こうへ行くよ」

真夜は自分のぶんの紅茶を淹れ、リビングのテーブルに置いた。

向かい合って座る。

一樹はあまり喋らない。色々と気を遣ってくれているのだろう。べらべら喋られてもびっくりするが、真夜は沈黙が得意ではない。

これまであまり話してこなかったが、思い切って話しかけてみることにした。


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