エリート医師のイジワルな溺甘療法
「えっと、服はどこに置いたんだけ?」
乱れた髪を手グシで整えながら見回せど、それらしきものはどこにもない。
あるのは、だだっ広いベッドとなにも置かれていない焦げ茶の床のみ。
とりあえずシーツを体に巻いて、ベッドから降りるために移動していると、開いたドアの向こうから彼が顔を覗かせた。
「穂乃花。珈琲入ったぞ。こっちに来るか?」
彼はしっかり服を着ていて、髪は寝癖などの乱れがない。
すでに、スッキリ爽やかな整形外科医っぽい顔になっている。
私だけ、夜の名残であたふたしてるなんて、すごく恥ずかしい。
「はい。行きます。あ、あの、でも服が見つからなくて……知りませんか?」
おずおずと訊ねると、彼はにこっと笑った。
「もちろん知ってるぞ」
そう言ってこちらに向かってくる姿は爽やかだけれど、私を見つめる目が、ちょっぴりイジワルに見える。ベッドの上で見せてくれた、オトコの目の名残のように。
「俺が脱がせて、片付けたんだからな。ほら、ここだ」
クローゼットの中からハンガーごと取りだして、私に渡してくれる。
服がしわにならないように、気を遣ってくれていたんだ。私が眠っちゃった後に。
「ありがとうございます」
「どういたしまして。君を帰せなくなったのは、俺の我儘だから。これくらい当然だ」