エリート医師のイジワルな溺甘療法
彼の手のひらが私の頬にそっと触れてきたので、目を閉じて幸せな気持ちに浸る。
じんわり伝わってくる愛情に身を任せていると、クスッと笑う声が聞こえた。
「困ったな。そんなに無防備にされると、ベッドから離れがたくなる」
今から抱いてもいいか?と甘く言って耳にキスをするから、首筋がぞくぞくと震える。
でも今は、このまま流されたらいけない。
目をぱちっと開けて、彼の唇の辺りを手のひらでグイッと押し返した。
「ダメですよっ。名医の安西先生は、決して遅刻なんかしませんっ」
手のひらに、彼のクスクスと笑う吐息がかかる。
これって、また私からかわれているんだろうか。
「分かってるよ。やっぱり穂乃花は厳しいな。もっと君にじゃれたいけど、時間切れだ。ほら、早く服を着てくれ。連れて行くから」
「えっ!?」
彼は、私が服を着るのをここで待つらしい。
けれど、着替えるところをじっと見られるのは、なんというか、まだ恥ずかしい。とくに下着をつけるところを見られたくない。なんで?と言われると、自分でもうまく説明できないのだが。
「大丈夫ですっ。ほら、昨日みたいに、杖がなくてもひとりで行けますから。自信持てましたし」
「ダメだ。まだ不安定だから、俺が連れていく……はずかしいなら後ろ向いてるから」
たしなめられて言い返すこともできず、超速で服を着て髪を手のひらでなでつけた。
彼に運ばれてダイニングに行けば、珈琲とホットサンドが用意されてあって、ありがたくいただいたのだった。