エリート医師のイジワルな溺甘療法
膝の上に置いている自分の手は、硬く握り過ぎて血の気を失っている。でも、それ以上にぎゅうっと握りしめた。
「だから、この先もずっと……雄介さんの隣にいたいんです。あなたを、しあわせに、したい」
思っていたこと全部を、言い切ったと思う。
伝え終わった今も、彼は無言のままだ。
なにか言ってほしいけれど、聞くのが怖い。
目をぎゅっと瞑っていると、彼が深いため息を吐いた。
「ああ……参ったな」
ぼそっとつぶやかれた瞬間、私は弾かれるように立っていた。
こんな話は迷惑だったんだ。やっぱり、縁談があるから。
玉砕覚悟していたのに、彼のために身を引く決意もしていたのに、目に涙が溢れてくる。
「ごめんなさいっ」
困っている彼の姿なんて見られない。
走りづらい脚を一生懸命に動かして、一目散にドアを目指した。
早くこの場から消えたい。
「待て! 穂乃花!!」
声がしたのと同時に目の前に彼の体が現れて、避けることもできずにいた私は、ぽすんと受け止められた。
「ごめん、逃げないでくれ。頼む」
「あ……インテリアなら、彼女との新婚生活に、不備がないように、ちゃんとそろえますからっ。心配しないでくださいっ。落ち着くまで、会えないかもしれないですけどっ」