エリート医師のイジワルな溺甘療法
「彼女とは二度会った。一度目はお見合いで、二度目は遊園地デートで」
「え……遊園地なんですか? お食事とかじゃなく? あっ、まさか孫娘さんって」
「お察しの通り、若い。彼女は十九歳で、まだ大学一年生なんだ。『今は恋人がいるし、まだ覚悟もないのに将来を決めるのは嫌だから、俺から上手く断ってほしい』って、振られたよ」
意外……雄介さんを振る人がいるなんて。
けれど好きな人がいれば、ほかの人と結婚するのはだれだって嫌に違いない。たとえお家事情だとしても、いくらハイスペックなイケメン医師が相手でも。
それに、歳が離れすぎなのもネックだったのかな。彼から見ても、十九は子ども過ぎるもの。断られて内心ホッとしたかも……私も、すごくホッとしてる。
「まあそんなわけで、ここを買ってしまったわけだ。部屋が出来上がったら、ひとりぼっちでも住まないわけにはいかないだろう? ここを売ることも考えたよ」
「だから、とりあえず布団だけ用意したんですか。そっか、裏にそんな事情があったんですね」
当時びっくりしたことを思い出して笑ってしまい、慌てて口を押さえた。
彼は振られて、お部屋だけ残って困っただろうに。それに……。
「開業は、もうあきらめたんですか」