エリート医師のイジワルな溺甘療法
その優しい笑顔に胸がトクンと高鳴る。
この人はズルイ。今までどれだけの人に、その笑顔を見せて来たのだろう。
「……そんなに緊張しないで」
「はい……でも、やっぱり怖いんです」
「痛くないよ。できるだけやさしくするから、絶対に動かないでくれよ」
「は、はいっ。じゃあ、あの、いっそのこと……ひとおもいに、さくっと、お願いします」
怖いけれど、どうせやらなきゃいけないんだから、早く済ませてもらったほうがいい。
そう思って真面目に言ったのに、何故か彼は破顔した。
「ははっ、さっきまで怖がっていたのに。君って意外に面白いな。大丈夫、俺上手だから。安心して任してくれ」
ちょっぴりイジワルそうな眼差しを向けられたから、急に恥ずかしくなって、顔から火が出そうになる。
「じょ、上手だってことは、十分分かっているつもりです。だから、平気ですっ」
「へえ、そうかな? これでやるんだけど?」
面白そうに尋ねながら、器具をひとつ手にした。
それは、しっかりした持ち手の先に、扇状でギザギザの歯が付いた器具。
その名もギプスカッターいうもの。
これは、骨折をした時に嵌めたギプスを切って外すための器具だ。
そのごつさと鋭そうなのこぎり状の刃を見て、全身の血の気が引いていくのが分かる。