エリート医師のイジワルな溺甘療法


「君は、本当に好きなんだな。家具の話をすると、目が生き生きする。マホガニーでもそうだったぞ。診察中には、とてもお目にかかれない表情だ」

「診察中は、怖いからです。病院で生き生きしてる患者さんなんて、いませんよ。先生くらいなもんです」

「ん、俺が生き生きしてるのか?」

「ええそうです。私がストレッチで痛がってると、いじわるーく笑ってたんですから。ギプスを取るときだって、それはもう、悔しいくらいに生き生きしてました」


ギプスカッターを握っていた顔は、すごくうれしそうだったのを覚えている。先生は、医者の仕事が好きなのだ。


「ああそれは、君がかわいい顔をするからだな。良い反応が返ってくると、楽しくなる。だからと言って、サドじゃないぞ?」

「……え」


本日二度目。先生の顔をガン見する。

Sじゃないけど、良い反応が楽しいって……それは、いったいどういう意味でしょうか??


「俺は、普通の男だよ」


この人は、女ごろしなのも、Sなのも、全然自覚がないのだ。なんて危険な男なんだろう。


「せ、先生の普通は、きっとレベルが違うんですっ」


先生は一瞬きょとんとした後、アハハと声を立てて笑う。

それは初めて見る表情で、すごく楽しそうで……プライベートの先生は、こんなふうに笑うんだ。

先生のことをもっと知りたくなる。

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