エリート医師のイジワルな溺甘療法
「そうだ。瀬川さんが家具好きなら、俺の部屋のコーディネートを頼もうかな」
「は?」
「君が家具を選んでくれないか。住みやすくなりそうだ」
「……私が、ですか」
思ってもいない依頼で、デザートのフルーツケーキを食べる手を止めた。本日三度目のガン見……ではなく、先生の顔をじっと見つめる。
「俺はよく分からないし、そもそも興味がなくて面倒なんだ。君がやってくれれば助かるし、家具をそろえようという気になる。得意なんだろう?」
「でも、今私はフロアじゃなくてサービスカウンターですから、販売接客はできませんよ」
「うん、だから個人的に頼むんだ。休日には家具選びに付き合ってくれ。その代わり、俺が個人的に君のリハビリを見るよ」
先生は珈琲カップを口に運びながら、悪い提案じゃないと思うが?と言う。
確かにその通り、ギブアンドテイクで悪い話ではない。
このお食事でおしまいじゃないんだ。ショップ店員としてでなく、この先も、先生と個人的に会える。
しかも、私の好きなことが先生の役に立てるなんて、こんなにうれしいことはない。がんばりたいと思う。
「先生、リハビリよろしくお願いします」
「ん、最善を尽くすよ。君が良い空間を作ってくれるのを、期待してる」
「はいっ、最善を尽くします」
「いい返事だ」
何故かおかしくて、お互い顔を見合わせて笑いあった。
それから具体的にいつから始めるか相談をして、先生に家まで送ってもらった。
その夜は、ふわふわした気持ちで眠りに就いたのだった。