エリート医師のイジワルな溺甘療法


「だけど。そんなふうに誰もが撃沈する中、穂乃花は逆に誘われて、お食事デート! ね、もしかしてさ、気があるんじゃない? 脚の怪我がなかったら、送りオオカミの餌食になったかも!」

「えええ!? 気があるって、そんなバカな」

「リハビリしてくれるのも、早く治して抱きたいから、だったり?」


呆気に取られている私に対し、麻友は、なにか思い当たることはない?と言って、探るような目を向けてくる。にこーっと笑っていて、すごく楽しそうだ。


「えーっと、そんな、思い当たることなんか、なにも……」


『君がかわいい顔をするからだな』


「う……」


例の女ごろしのセリフを思い出してしまう。

私は生まれてこのかた、“かわいい”と男性に言われたことがない。

顔がぼわっと熱くなって、必死に手で仰いで冷ます。

あんなのアメリカ帰りの先生にとっては、朝の挨拶みたいなものだ。

さらりと言っていたし、とりあえず女性は褒めようみたいな、アメリカかぶれのサービス精神だ。だから、本気にしちゃダメ。


「ないよ。送りオオカミも、ないない。あのときはたまたま時間的に先生が腹ペコだったから、誘われただけで。三時くらいだったら、その場でさようなら~だったよ。ただの、運」


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