エリート医師のイジワルな溺甘療法


「うーん、そうかなー。赤い顔して言われても、全然説得力ないよ。でもどっちにしろチャンスじゃない? これから先生のハートを、しっかりゲットしなきゃ。それで、連絡先は交換したの?」

「うん。しっかりアドレスに入ってる」


交換したのは、アパートまで送ってもらった時。

お礼を言って降りようとしたとき、『ちょっと待って』って腕を引かれたのだ。

このタイミングで引き止めるなんて……まさか、キス……?

ドキンと肩を揺らした私に、先生は名刺の裏に電話番号を書いて渡してくれたのだった。

そして、『連絡先訊いてなかった。そこに電話してくれ。瀬川さんのを登録するから』って、おもむろに携帯を出した。

ホッとしたような残念なような、複雑な気持ちを抱えつつ電話をすると、先生の携帯から柔らかいメロディが流れた。


『プライベートの電話だから。他言無用な』


先生は、緊急呼び出し用の電話と個人の電話と、ふたつ持っていると言った。


安西雄介……先生のフルネームに電話番号。

知っているのは、患者の中では私だけ。看護師さんたちも知らないはず。

これがあるということは、夢じゃないわけだ。

先生の車に乗ったことも、約束をしたことも、全部。


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