エリート医師のイジワルな溺甘療法
マホガニーの休憩室には、楕円の背もたれがスタイリッシュな、イタリア製の椅子が置かれている。
座面のクッションは薄いが弾力があって座り心地が抜群で、みんなの評判も上々なものだ。
テーブルは白くて長方形だけど、椅子が赤に黄色に青と、とてもカラフル。
青い椅子を見ると、群青色が好きだと言った先生のことを思い出してしまう。
私の話を静かに聞いてくれるやさしい瞳とか、マッサージをしてくれるあたたかい手とか、しっかり支えてくれる逞しい腕とか。甘くて、低い声とか……。
本気で好きになったら怖いのに、好きにならないようにしてるのに、全然頭から離れてくれない。本当に……困った人。
今日は麻友も同じ早番なので、お昼休憩は時間を合わせて一緒に過ごしている。
職場で彼女と一緒になるのは久しぶりだ。お弁当を食べながら先生のマンションの話をすると、麻友の動きがぴたっと止まった。
「うっそ、あの噂のタワーマンションの2LDKに、キングサイズのベッドなの?」
「うん、びっくりでしょ? 収入が桁違いで、身分差が半端じゃないの。でも、御曹司じゃないんだって。それだけは確かめたわ」
「え、待って。そこじゃなくてさ。穂乃花、それってヤバくない?」