エリート医師のイジワルな溺甘療法
麻友が声を潜めたので、私もちょっと身を乗り出して小さな声を出す。
「ヤバいって、なにが? まさか犯罪系の話なの? 収入が多いのは、先生が敏腕の整形外科医だからで、クリーンな人だと思う」
そりゃあ、だいぶ女ごろしで罪作りだけど。罪の意味が違う。
「やだな、違う違う。穂乃花ったら、そこでもないから」
びしっと否定されるも、麻友の言わんとするところがイマイチぴんと来ない。
先生のなにがヤバいのか。
「ごめん。私さ、前に穂乃花にがんばれーってそそのかしちゃったけど、先生に深入りするのは止めた方がいいかもしれない」
「麻友、ますます分からないよ。犯罪系じゃないなら、どういうこと?」
私の胸に、もやもやと不安が広がっていく。
そんな私に、麻友は顔をぐっと近づけてきた。
目がすごく真剣で怖いくらいで、不安と緊張にさいなまれ、息をするのも忘れてしまう。
「だって、穂乃花、考えてみてよ。独身の男が、そんなだだっ広い部屋と大きなベッドをひとりで使うの?」
「あ……」
そういえば、そうだ。億ションのすごさと、先生の無頓着さと破格の女ごろしぶりに翻弄されてて、まったく気づいていなかった。
たしかに、ひとり暮らしなのに、あんなに広い空間は要らない。
特に先生なんて、住宅にこだわりがなさそうなのに。