エリート医師のイジワルな溺甘療法


京都の迎賓館と同じような床とか、空しか見えない眺望とか、先生自身が選んだものとは思えない。

ひとりで住むなら、もっと普通レベルのマンションにしそうだ。

荷物もすごく少なかったから、広めのワンルームで十分そう。

それでも、あのマンションなのは……。


「ね、分かる? ひとりって、あり得ないじゃない?」

「麻友の言う通りかも。一緒に住む人……ていうか、婚約者がいるってこと……だよね」

「決定的とは言わないけど、可能性があるよね。穂乃花にインテリアのコーディネートを頼んだのは、完璧なお部屋にしたあとに、彼女を家に迎えるつもりとか」

「……そうかも」

「本当なら彼女と家具選びをしたいけど、遠距離で会うのが難しいとか」

「ますます、そうかも……」


先生はずっとアメリカに住んでいたのだ。

実はアメリカに彼女を残してて、後ろ髪を引かれる思いで帰国したのかも。

アメリカ人の彼女だから、土足でもOKな迎賓館の床なの? あちらは住宅も広いから、二十四畳のLDKなんか狭いくらいかもしれない。だからせめてベッドだけはって、大きなものにしたのかも。

そうだ、あのマンションは外国人が多いって言っていたじゃない。

考えるほどに合点がいく。


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